Hideki Abeさん
「波間に漂う美の求道者」

Hideki Abe
  • 10 books / vol.002
  • 2015.1.20


送られる人:
Hideki Abe
HACデザイナー。
LA在住。

1963年宮城生まれ。
1981年、18歳の時に仙台でサーフィンを初体験し
人生観が変わるほどの衝撃を受ける。

その後、青森、東京と移住しながらLAにたどり着き20年。
今度は聖書に出会って救われ、また人生観が変化する。

「サーフィンをし、ファッションの仕事をしながら、
この美しい地球で生かされています。」


送る人:
松田 拓巳 / Takumi Matsuda
North Lake Books主宰。
我孫子在住。

今回の送る10冊はLA在住のHideki Abeさんにお送りします。1994年30歳の時に渡米し、LAでファッションビジネスとサーフィンを楽しんでいる私のひとつ上の先輩です。 初めてお会いしたのは、私がアメ横のA Kinky Little Store Beatniksという古着屋で働いていた時です。Abeさんは、大手ジーンズメーカー系列のインポート商品の会社にいらして、 米国サイドのエージェントが一緒だったこともありいろいろなところでお会いしていました。その時は今ほどやりとりしていませんでしたが、物静かなで穏やかな笑顔がとても印象的でした。

Abeさんが渡米すると聞いた時、驚きと羨望で揺り動かされたのを憶えています。あれから20年、秋葉原で買ったマックのコンピューターとともに海を渡り、「自分のブランドを始めて、 たくさんサーフィンをするぞ」という夢を果たし、今も新たな夢を持ちながら生活していらっしゃいます。昨年の夏、久しぶりに帰国したAbeさんと東京で再会しました。 同席する友人たちを待っている間、生ビールで乾杯し色々お話しをお聴きしたところ、数年前自分を取り巻く環境に大きな変化があってクリスチャンになったのだそうです。 それからは、毎朝、聖書を読んでいるとのこと。
「心の拠り所が欲しくって」とはにかむAbeさんに、10冊選んでみました。

1 チャイナタウンからの葉書

チャイナタウンからの葉書
  • リチャード・ブローティガン 著
  • 池澤夏樹 訳
  • ちくま文庫

最初に浮かんだのがR・ブローティガンです。ビート・ジェネレーションの作家たちに影響を受けるも自ら一線を画していた孤高の作家の詩集。 多岐にわたるAbeさんの表現の仕方が詩集を編んでいるかのような気がするのです。

今日もひとりきっと夜中遅くまでLAのスタジオでミシンのカタカタというリズムに乗せて試作品を形作っていることでしょう。

2 新編 宮沢賢治詩集

新編 宮沢賢治詩集
  • 中村 稔 編
  • 角川文庫

宮沢賢治は30歳のとき農学校を依願退職し自ら農業に転じています。教鞭を振るっていたにもかかわらず、農民の貧困を黙視できず、農業指導に奔走したそうです。 同じ30歳という歳でアクションを起こしたAbeさん、寡黙に信ずることをやり続ける姿勢は東北人特有の血が流れているからなのでしょうか。

Abeさんは仙台で生まれ、青森で青春時代を過ごし、そこでその後の人生を方向づける大きな出会いがあったそうです。そして何かあると東北弁を使いたがるAbeさんです。

3 津軽

津軽
  • 太宰治
  • 新潮文庫

昭和19年に津軽風土記の執筆を依頼され、3週間にわたって旅行をした時に生まれた作品です。これを読んで同じ行程を歩いた英国人作家アランブースのように、Abeさんと津軽を歩きたい、いく先々で地元の方と酒を酌み交わしたい、ふとそう思いました。

でもきっと、Abeさんと深くコミュニケートするには北の海で波乗りしないと難しいのかもしれない・・・。

4 波の絵、波の話

波の絵、波の話
  • 稲越功一・村上春樹
  • 文藝春秋

「もっともっと海の近くに暮らしたい」と。今週末も良い波を探して車を走らせるのでしょうね。尊敬しているサーファーはみんな型破りでパイオニア的なサーファーだそうです、、、 Abeさんらしい(笑)

波に乗っているとどんな音が聞こえてくるのでしょうか? ドアーズ?ジョンフォガティ?ビーチボーイズ? そんな音は聞こえず地球を感じているだけなのでしょうか、、、

5 聖なる地球のつどいかな

聖なる地球のつどいかな
  • ゲーリー・スナイダー+山尾三省
  • 山里勝己 監修
  • 山と渓谷社

「場」(プレイス)の感覚を深めて地球での人間のあり方を求め続けている二人の対談集。きっとAbeさんも「似たような感覚」をお持ちだろうと私は思っています。 久しぶりにパラパラとめくってみましたが読み直したい衝動に駆られています。

前述の宮沢賢治をゲーリーさんは翻訳しています。つながりました!

6 現代語訳「古事記」

現代語訳「古事記」
  • 福永武彦 訳
  • 河出文庫

ファッションを仕事としてやっていくには、なにかと昔を振り返ることが多くなるのではと想像します。温故知新、何にも感じることができず素通りしていたものが、 時間を経て新鮮に感じることもしばしばあるのではないでしょうか。

わが国で現存する最古の典籍を現代語訳した福永武彦も晩年クリスチャンでありました。

7 海辺のレッスン

海辺のレッスン
  • ジョーン・アンダーソン
  • 入江真佐子 訳
  • Soft Bank Publishing

海に戻りましょう。誰かが言っていましたが、「海は学校」なんだそうです。そんな気がします。波や光、空は感覚を研ぎ澄ましてくれるでしょう。 砂浜を散歩していて出会った老人の話も、落ち込んでいた自分を前向きにしてくれるかもしれません。

この本の巻末に作家の言葉がまとめられています。「思う存分身体で感じる」「波頭を越えて踊る」「自分の強さを頼りにする」「自分を支持する」「自分の知っていることを分かち合う」「経験をすべて遊びと考える」「満足を求めて手を伸ばす」「いつも喜んで困難に挑む」、、、Abeさんはすでに実践されている気もしますが(笑)

8 PRE-POP WARHOL

PRE-POP WARHOL
  • Jesse Kornbluth
  • Random House

著名になる前のAndy Warholの作品集。広告や本や雑誌、レコードジャケットなどの作品群。シルクスクリーンを用いる前の手描きの時代。

AbeさんはAndy Warholがいかにクリエイトすることとビジネスとを両立して行ったのか興味をお持ちのようです。 ヒントはこの手描き時代に隠されてやしないかと、勘ぐってみました。

9 最終目的地

最終目的地
  • ピーター・キャメロン
  • 岩本正恵 訳
  • 新潮クレストブックス

長編小説を1冊。2002年にLA TIMES 文学賞の候補作の本書。舞台はウルグアイ、イギリスの古典小説のような味わい深い作品。 たまには手を休めどっぷりロングストーリーにはまり込んでは如何でしょう。

いまはLAで活動するAbeさん、5年後、10年後、どこに向かっているのか、どこに辿り着いているのか、楽しみです。 「眺めのいい部屋」の監督が映画化しているようです。

10 自分をさがして旅に生きてます

自分をさがして旅に生きてます
  • 吉田ルイ子
  • 講談社文庫

60年代にアメリカに渡った著者はニューヨークで今までの自分を捨て去り、日々、生存との闘いをしいられる。自分の生き方は自分でしか決められない!これが出発点になったそうです。

Abeさんも海を渡りLAに降り立った時、そんな気持ちの昂りや覚悟があったはずです。自らの魂に探査機を下ろし、Searching Myselfの旅はまだまだ続きそうですね、Abeさん!

Takumi Matsuda

Hideki Abeさんへ送る10冊いかがでしたでしょうか? 東北、波乗り、キリスト教がキーワードだった気がします。きちんとヴィジョンを持ち、面白そうなことには臆せず手を伸ばす、そんなAbeさんに勝手に選んだ10冊、読み直したいものが何冊かありました。

Abeさんの多岐に及ぶ活動は彼のサイトを参照してください。ABEさん自身に興味を持たれたり、10冊のうち1冊でも読んでみたいと思われたら幸甚です。

松田 拓巳 / North Lake Books